豊岡演劇祭観劇日記 DAY1 9月19日(土)

▼豊岡演劇祭とは

兵庫県豊岡市を舞台とする豊岡演劇祭2020が9月9日(水)から22日(火・祝)まで開催されている。豊岡演劇祭はプレ実施にあたる2019年の第0回を踏まえて今年から本格始動する演劇祭で、フェスティバルディレクターを劇作家・演出家の平田オリザが務める。平田は同じく豊岡市に2021年4月開校予定の国際観光芸術専門職大学(仮称)の学長候補者でもあり、演劇祭は大学の設置とともに演劇による地域振興の一翼を担うプログラムだ。豊岡市ではすでに市内38のすべての小学校・中学校において演劇教育が導入されており、地元に根付きながら世界にもつながる文化が豊岡の地では着実に育っている。
当初の予定では国内外から多くのアーティストを招聘する予定だった豊岡演劇祭2020も新型コロナウイルスの影響で計画を変更せざるを得ず、今年のメインプログラムは平田や平田の主宰する劇団・青年団にゆかりのあるアーティストを中心としたラインナップ。フリンジプログラムに関しても国内からの参加のみとなったが、それでも大道芸やワークショップ、フィールドワークを含め30を超える多彩なラインナップが揃った。

▼豊岡演劇祭観劇日記とは

無数の作品が上演される海外の演劇祭では作品への応答として同じく無数の劇評が発信され、人々はそれを参考に観る作品を決めたりする。劇評の盛り上がりが評判と議論を呼び、それが観客からまた新たな反応を引き出す。ひとつの作品の公演期間が短い日本では劇評を読んでから観るかどうかを決めるということが難しく、劇評文化はなかなか根付かないのだが、それでも演劇祭に合わせて劇評的なものが残っていれば、自分が観た作品を改めて振り返り、観なかった作品に思いを馳せる時間を作り出せることができる、かもしれない。
昨年の第0回豊岡演劇祭では全プログラム(といっても4つしかなかったのだが)について劇評を書いた。今年はさすがに演劇祭全作品というわけにはいかないが、会期後半4日間9作品の劇評をお届けする予定。

第0回豊岡演劇祭のレビューはこちら。
青年団『東京ノート・インターナショナルバージョン』
https://artscape.jp/report/review/10158246_1735.html

ホエイ『或るめぐらの話』
https://artscape.jp/report/review/10158248_1735.html

うさぎストライプ『ゴールデンバット』
https://artscape.jp/report/review/10158447_1735.html

柿喰う客『御披楽喜』
https://artscape.jp/report/review/10158448_1735.html

▼敷地理『blooming dots』

会場は奥城崎シーサイドホテル宴会場。7月にリニューアルしたばかりだというホテルは入ってすぐのところにキレイなカフェもあって居心地がよさそう。最寄りの竹野駅からは徒歩23分。竹野駅自体が豊岡演劇祭のメイン会場がある江原駅からだと1時間前後かかる(時間帯にもよるが電車は1時間に1本程度)場所なので、前後に他の予定を入れる際には少し注意が必要。海水浴場がある竹野には民宿も多く、ここに宿泊して演劇祭の期間を過ごすというのもありだったなと思う。私が到着したときにはすでにあたりは暗く、ほとんど何も見えなかったのが残念。
敷地理『blooming dots』はオンラインでのコミュニケーションを問題とした作品。鑑賞者はスマートフォンとZOOMを使い、イヤフォンから聞こえてくる指示に従って画面に映し出される自分や他人の手を観察しその感覚を想像する。回によって公演会場のみで開催の回、オンラインのみで開催の回、両方同時開催の回があり、私が参加したのは同時開催の回。参加者はオンラインと合わせて15,6人ほどだろうか。
鑑賞者は1人ずつビニールの膜で覆われた鑑賞ブースに隔離され、ほとんどの時間をその中で過ごすことになる。ブースの中には椅子と机、その上には松の枝、砂、氷が置かれたお盆。イヤフォンからの指示に従い、自らの手をZOOMの画面に映し出し、それを眺め、動かし、氷に触れ、画面に映し出される他人の手を真似る。画面に映し出されるいくつもの手の中から任意に選んだ他人の手を真似たり、氷を持つ他人の手の感覚を想像したりする部分が特に面白かった。任意に選ぶ、というのが一つのポイントで、私が真似しているその手は、実は私を真似しているかもしれない。感覚のループとその根源の曖昧さ。
会場とオンラインの同時開催というのも効果的だった。私が氷をつかんでいるそのとき、オンラインでの参加者は(手元に氷がないので)私と同じ手の形をつくりながら、たとえばマウスをつかんでいる。スマートフォンの画面に並ぶ似たようないくつもの画像とその差異は、たしかなはずの私の感覚を曖昧にさせる。
と、コンセプトは面白かったのだが、イヤフォンからの指示が冗長で意味を取るまでに時間がかかり、なかなか自分の手の感覚に集中し続けられないのは大きなマイナス。Wi-Fi環境も悪かったようで指示もしばしば途切れ非常にストレスフル。言葉による指示で画面上の身体に感覚を同調させるにはそれこそ催眠術師のような手練手管が必要なはずで、そのあたりの作り込みが甘い。後半、鑑賞者を現実の側に引き戻すような展開も、画面を介した感覚の面白さに負けてるように思えた。
しかし駅まで徒歩23分、終電が21時24分の場所で終演時間が21時というのは観終わったあとに電車に乗る観客を想定していないのだろうか。もう30分前にずらしてくれると終電の時間を気にせず楽しめると思うのだけど。

豊岡演劇祭2020

開催期間:2020年9月9日 - 9月22日
公演プログラムやフリンジについては下記ホームページをご覧ください
https://toyooka-theaterfestival.jp/

Written by
山﨑 健太
山﨑 健太
@yamakenta